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■先住民族
■先住民族とは?
先住民族とは、地球の他の地域から異文化・異民族的な起源を有する人々が到来し、地元住民を制圧して征服して、彼らを植民地政策などの手段により植民地的、もしくは劣勢な社会状況に追い込む以前の、その地域にわたって、もしくは部分的に居住していた人々の現存する子孫からなる民族集団である。
先住民族は現在組み込まれている国家の諸制度よりも、独自の社会、経済、文化的慣習および伝統に従って生活しながら、マジョリティー社会の民族的、社会的、文化的な要素によって構成されている国家体系に不本意に編入されている状況にある人々のことである。
(国連 先住民作業部会)
先住民族とは、一般に、ヨーロッパを起源とする「近代化」が世界的に展開するなかで、支配的集団によって民族としての存在を否定され、同化を強制された民族的集団をいう。
(世界民族問題辞典)
1.古来ある土地に住んできたこと
2.現在その土地において異民族の支配下にあって独自の生活様式などを自由に享受できない状況にあること
3.自ら先住民(族)と名乗る、あるいは国連や支援団体によって先住民(族)とされていること
(岩波講座文化人類学第6巻 紛争と運動)
一般に「先住民族」は、「少数民族」との違いを次のように考えています。
もしある民族が合意や自由な意思で、国家に統合されたとすれば、その人々は「少数民族」に当たりますが、合意もなく一方的に国家に統合された人々は国際法上の民族としての完全な権利を留保している「先住民族」であるとしています。
もちろんこうした定義には例外もあります。
アフリカ系のアメリカ合州国人、いわゆる「黒人」は、自由な意思でアメリカ合州国に統合されたわけではありませんが、先住民族の権利の対象になるとは思われません。しかしながら、中国や旧ソ連が、国内の各民族は自由な意思で国家に統合されたとして、国内の弱い立場にある民族を「先住民族」ではなく「少数民族」とした事例などもあります。
日本政府は1997年には「先住民族」という表現を用いながらも「この語句の使用は自決権を含意しない」と声明しています。
一方北海道ウタリ協会は1998年の国連での声明の中で「先住民族」という用語を支持すると述べ、「国家の統合の下にあっても、その集団を維持するために一定の秩序を持ち、自らの責任のもとに一定の決定を行うことは欠かすことのできない権利である」という立場をとっています。
なお、アイヌ民族は、国際社会ではっきりと「先住民族」であることを表明しており、国連などで「先住民族」として認められています。
1992年12月、「世界の先住民の国際年」の開会セレモニーでも、北海道ウタリ協会理事長(当時)野村義一は国連総会に招かれ、下記の演説を行いました。
■ 1992年12月10日 国連総会「世界の先住民の国際年」記念演説 北海道ウタリ協会理事長(当時) 野村 義一
各国政府代表部のみなさん、そして兄弟姉妹である先住民族の代表の皆さんにアイヌ民族を代表して、心からごあいさつ申し上げます。
また、ここの招待してくださったブトロス・ガリ国連事務総長、そして、アントワーヌ・ブランカ国連人権担当事務次長に対し心から御礼を述べたいと思います。
本日は国際人権デーですが、1948年に世界人権宣言が採択されて45周年の、人類にとって記念すべき日に当たります。
また、国連先住民年の開幕の日として、私たち先住民族の記憶に深く刻まれる日になることも間違いありません。
これに加えて、本日12月10日が、北海道、千島列島、樺太南部にはるか昔から独自の社会と文化を形成してきたアイヌ民族の歴史にとっては、特に記念すべき日となる理由がもう一つ存在します。
すなわち、それは、ほんの6年前の1986年まで、日本政府は私たちの存在そのものを否定し、日本は世界に類例を見ない「単一民族国家」であることを誇示してきましたが、ここに、こうして国連によって、私たちの存在がはっきりと認知されたという事であります。
もし、数年前に、このような式典が開かれていたとすれば、私は、アイヌ民族の代表としてこの演説をすることは出来なかったことでしょう。
私たちアイヌ民族は、日本政府の目には決して存在してはならない民族だったのです。
しかし、ご心配には及びません。私は決して幽霊ではありません。皆さんの前にしっかりと立っております。
19世紀の後半に、「北海道開拓」と呼ばれる大規模開発事業により、アイヌ民族は、一方的に土地を奪われ、強制的に日本国民とされました。
日本政府とロシア政府の国境画定により、私たちの伝統的な領土は分割され、多くの同胞が強制移住を経験しました。また、日本政府は、当初から強力な同化政策を押し付けてきました。
こうした同化政策によって、アイヌ民族は、アイヌ語の使用を禁止され、伝統文化を否定され、経済生活を破壊され、抑圧と収奪の対象となり、また、深刻な差別を経験してきました。川で魚を捕れば「密漁」とされ、山で木を切れば「盗伐」とされるなどして、私たちは先祖伝来の土地で民族として伝統的な生活を続けていくことができなくなったのです。これは、どこの地でも先住民族が共通に味わわされたことであります。
第二次世界大戦が終わると、日本は民主国家に生まれ変わりましたが、同化政策はそのまま継続され、ひどい差別や経済格差は依然として残っています。
私たちアイヌ民族は、1988年以来、民族の尊厳と民族の権利を最低限保障する法律の制定を政府に求めていますが、私たちの権利を先住民族の権利と考えてこなかった日本では、極めて不幸なことに、私たちのこうした状況についてさえ政府は積極的に検討しようとしないのです。
しかし、私が今日ここにきたのは、過去のことを長々と言い募るためではありません。
アイヌ民族は、先住民のための国際年の精神にのっとり、日本政府および加盟各国に対し、先住民族との間に「新しいパートナーシップ」を結ぶよう求めます。私たちは、現存する不法な状態を、我々先住民族の伝統的社会のもっとも大切な価値である、協力と話し合いによって解決することを求めたいと思います。私たちは、これからの日本における強力なパートナーとして、日本政府を私たちとの話し合いのテーブルにお招きしたいのです。
これは、決して日本国内の問題にだけ向けられたものではありません。
海外においても、日本企業の活動や日本政府の対外援助が各地の先住民族の生活に深刻な影響を及ぼしています。これは、日本国内における先住民族に対する彼らの無関心と無関係ではありません。新しいパートナーシップを経験することを通して、日本政府が、アイヌ民族に対するだけでなくすべての先住民族に対して責任を持たねばならないことを認識されるものと、私たちは確信を抱いております。
日本のような同化主義の強い産業社会に暮らす先住民族として、アイヌ民族は、さまざまな民族根絶政策(エスノイド)に対して、国連が先住民族の権利を保障する国際基準を早急に設定するよう要請いたします。また、先住民族の権利を考慮する伝統が弱いアジア地域の先住民族として、アイヌ民族は、国連が先住民族の権利状況を監視する国際機関を一日も早く確立し、その運営のために各国が積極的な財政措置を講じるよう要請いたします。
アイヌ民族は、今日国連で議論されているあらゆる先住民族の権利を、話し合いを通して日本政府に要請するつもりでおります。
これには、「民族自決権」の要求が含まれています。
しかしながら、私たち先住民族がおこなおうとする「民族自決権」の要求は、国家が懸念する「国民的統一」と「領土の保全」を脅かすものでは決してありません。私たちの要求する高度な自治は、私たちの伝統社会が培ってきた「自然との共存および話し合いによる平和」を基本原則とするものであります。これは、既存の国家と同じものを作ってこれに対決しようとするものではなく、私たち独自の価値によって、民族の尊厳に満ちた社会を維持・発展させ、諸民族の共存を実現しようとするものであります。
アイヌ語で大地のことを「ウレシパモシリ」とよぶことがあります。
これは、「万物が互いに互いを育てあう大地」という意味です。冷戦が終わり、新しい国際秩序が模索されている時代に、先住民族と非先住民族の間の「新しいパートナーシップ」は、時代の要請に応え、国際社会に大いに貢献することでしょう。この人類の希望に満ちた未来をより一層豊かにすることこそ私たち先住民族の願いであることを申し上げて、私の演説を終わりたいと思います。
イヤイライケレ。ありがとうございました。
■「民族」の定義
血筋、祖先の観念、共通の言語、身体的特徴、生活領域、物質・精神文化などがあげられますが、現在ではそうした具体的な標識の意識に基づいたアイデンティティ(その民族への帰属意識)が、とくに重視されています。
北海道ウタリ協会によるアイヌ民族の認定範囲として、「第一に、自分にアイヌの血があり、自らアイヌ民族であることを認識し、自ら表明したものであること」とあり、血筋という具体的な標識を意識した上でアイデンティティを持つものの集まりとされています。
「民族」による集団は国籍を持つ集団とは異なり、「日本国民」といった場合、それは日本の国籍を持つもののことで、単一民族を指しません。
現在の日本国民は、先住民族である「アイヌ」「琉球民族」「在日中国人」「在日韓国・朝鮮人」や世界各地のさまざまな民族で形成されていて、日本に住む外国人は既に100万人以上、全人口の1%を占めています。
「日本は単一民族国家」であるという認識は多数者による歴史の誤認であり、少数者に対する現実の圧迫でもあります。
日本の中に存在する文化の多様性に目を向け、それぞれの歴史や習慣、文化などを尊重しあう社会へと築いていきたいと願います。
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